「50年も前に月に行けたのに、今は誰も行かない」という点をもって「昔の月面着陸は嘘だ」という説が唱えられることがありますが、現在の学術的・技術的コンセンサスから見ると、その「嘘説」は信頼できる根拠を持っていません。むしろ、次のような理由で「しばらく人類が月に行っていない」ことは説明がつきます。

月面着陸が実際にあった証拠

まず、「月に人が行った」という事実は、多くの科学的証拠・データ・観測で支持されています。例えば:

  1. 月面から持ち帰られた月の岩石・土壌サンプル
     アポロ計画で月から持ち帰られたサンプル(月岩石など)は、地球上のものとは組成・年代等で異なる性質を持っており、別の天体から来たものであると広く認められています。
  2. 月面に遺された人類の人工物
     アポロ着陸地点には、月着陸船の残骸、科学機器、旗、足跡などが残されています。現在も月軌道を飛ぶ探査機がそれらを撮影して確認しており、人工物の存在が観測されています。
  3. 複数国・独立な観測が一致
     米国だけでなく、世界中の天文台や無人探査機がアポロの月到達の影響を確認しています。たとえば、月に設置された反射鏡にレーザー光を反射させて地球–月距離を測定する実験(レーザー測距実験)が、現在でも行われています。
  4. 記録・証言・文書
     関係者の証言、設計図、ミッション記録、通信データなどがきわめて精密に残っており、「でっち上げ」ではこれほど膨大な一貫性を持たせることは極めて困難だと考えられています。

したがって、月面着陸そのものを完全な「嘘」とする説には、信頼できる科学的反証がありません。


なぜ「今は」人類が月に行っていないのか

それでは、なぜ1970年代以降、ずっと人類が月に行っていないのか、という点を見ていきましょう。これは「月面着陸は嘘説」を支持するよりも、むしろ現実的な制約と選択の問題として説明できます。

以下が主な理由です。

理由 内容
コストと予算 アポロ級の有人月探査は巨額の費用が必要。社会保障・防衛・インフラなど他分野との予算配分の結果、月探査に回せる資金が限られた。
政治・政策の優先順位の変化 冷戦の宇宙競争が終わり、国威発揚の動機が弱まったため、月面着陸の優先度が低下した。
技術・人材資産の減少 サターンVや月着陸船など当時の装置・製造基盤、人材が失われ、再構築には時間と費用がかかる。
リスクと安全性 人を月に送り無事に帰還させるための生命維持・放射線対策・冗長設計などの要求水準が高く、ロボット探査より負担とリスクが大きい。
他の宇宙目標の重視 ISS運用、地球観測・通信衛星、火星探査など、費用対効果や技術応用性の高いプロジェクトが優先されてきた。
再開計画と時間のかかる準備 アルテミス計画など再有人月探査は進行中だが、新基準での設計・試験・検証に長い準備期間を要する。

実際、現在(2025年時点)も、NASAをはじめとする宇宙機関は「人類を再び月に」送る計画を進めています。米国の Artemis(アルテミス)計画 がその代表例で、すでに無人ミッションは成功しており、近い将来、有人ミッションを月周回・月面着陸させることを目指しています。 Live Science+1

つまり、「今は誰も行っていない」理由は、技術的に不可能だからではなく、「コスト・リスク・優先順位」の複合的な制約によるもの、というのが実情に近い説明です。


結論:嘘説は支持されない

  • 「50年前に月に行けたのに、今は誰も行かない」ことは、矛盾や疑問を感じさせる状況ですが、それ自体が「昔の月面着陸は嘘だ」という強い証拠になるわけではありません。
  • 多くの科学的証拠・観測・記録が月面着陸の事実を支持しており、学術界・宇宙機関でのコンセンサスは「月面着陸は実際に起きた」というものです。
  • 「しばらく月に行っていない」ことは、主に 資金・政策・技術・リスク・戦略の変化 によるものであって、嘘だとする説を支持する強力な根拠にはなりません。

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